予防医学のお話 No.51
脂質

掲載日:2019年5月7日

私たちは食事から様々な脂質を摂取しています。摂取した脂質は消化されて脂肪酸とグリセリンになり、体内に吸収されます。そして体内で1g当たり約9kcalのエネルギーを生み出す主要なエネルギー源として利用される他、細胞膜や核酸、神経組織などの主要な構成成分となります。また脂溶性ビタミンやカロテノイドの吸収を助けるなど、脂質は体内で様々な生理的機能を有する大切な栄養素のひとつです。


体内の脂質は、大きく中性脂肪、脂肪酸、コレステロール、リン脂質の4つに分類され、それぞれに大切な役割を果たしています。

中性脂肪
エネルギー源となり、体温を一定に保ち、臓器などを守る。
脂肪酸
エネルギー源となる他、細胞膜の構成成分となる。
コレステロール
細胞膜の構成成分となり、ホルモンや胆汁酸の材料となる。
リン脂質
細胞膜の構成成分となり、中性脂肪やコレステロールを血液や胆汁に馴染ませて運搬する働きがある。

脂質を健康維持に役立てるには、その「量」と「質」に配慮することが大切となりますが、その質を決定づけているのが脂肪酸です。脂肪酸には常温で固まる飽和脂肪酸と常温で液体状の不飽和脂肪酸があります。


飽和脂肪酸は豚や牛の脂身、バターなどの動物性脂肪に多く含まれています。豚や牛、鶏は人間よりも体温が高いため、それらの動物由来の脂肪はヒトの体内に入ると固まりやすくなります。脂質は赤血球や血小板の細胞膜の成分になるため、飽和脂肪酸を多く摂り過ぎると細胞膜が固まりやすくなり、血球成分同士がベタベタとくっつき合ってしまうことがあります。飽和脂肪酸は肝臓でコレステロールや中性脂肪をつくる際の材料となるため、また肝臓の細胞膜を変化させてコレステロールの取り込みを阻害するため、摂り過ぎは血中のコレステロール値を上昇させる原因となります。飽和脂肪酸はヒトの体内で、炭水化物や脂質をもとにして生合成することができるので、それほど多く摂取する必要はありません。

不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分類され、さらに多価不飽和脂肪酸はオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸に大きく分類されます。体内で作ることができないオメガ3脂肪酸は必須脂肪酸とも呼ばれ、不飽和脂肪酸の中でも特に重要な脂質です。

オメガ6脂肪酸は、大豆油、コーン油、紅花油、ひまわり油などに多く含まれ、ほとんどの方は普段の食事から充分な量を摂取していると言われています。非常に酸化しやすい性質があり、摂り過ぎるとアレルギー疾患の原因となったり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減らしてしまうという報告もあり、摂取量には注意が必要です。

オメガ3脂肪酸には、しそ油やエゴマ油に豊富に含まれるα-リノレン酸や魚油に含まれるDHA・EPAがあります。α-リノレン酸には血中コレステロール値を下げる働きがあり、EPAは血小板同士をくっつきにくくするため、血液が固まりにくくなり流れがスムーズになると言われます。DHAは細胞膜を軟らかくし、神経細胞同士の情報伝達をスムーズにするとされ、動脈硬化や認知症の予防に役立つと言われます。またDHAやEPAは血液中の余分なコレステロールを肝臓へ回収する手助けをするため、血中LDLコレステロール値を低下させる働きも報告されています。生活習慣病の予防にも役立つとされています。

2013年に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。動物性油脂の少ない健康的な食生活を支える栄養バランスを実現し、日本人の長寿や肥満防止に役立っていることは、和食の大きな特徴のひとつです。和食の中心でもある魚を意識したメニューを考え、積極的な摂取を心がけたいものです。またDHA・EPAを手軽に摂取できるサプリメントも上手に活用してみましょう。

予防医学のお話一覧へ戻る
このページの先頭へ戻る