予防医学のお話 No.47
生活習慣病と食生活

掲載日:2019年1月7日

年末年始は何かと行事やイベントが多く、ごちそうを食べたりお酒を飲んだりする機会が増える時季です。「ついつい食べ過ぎた」「飲み過ぎた」という方もおられるのではないでしょうか?

今回は、生活習慣の中でも特に「食生活」にまつわる「ウソ?ホント?」をいくつか解説してみたいと思います。

朝食を摂ると、生活習慣病になりにくくなる?

朝食の欠食は、こどもからおとなまで幅広い世代で見られ、特に20~30歳代の男性の約3人に1人は朝食を摂っていないと言われます。朝食抜きを続けていると、今は何も体に変化を感じていなくても、いずれは肥満につながります。

私たちの体は、1日3回の食事から必要な栄養素を摂取しています。しかし、朝食を摂らないと、残りの昼食と夕食の2回の食事で1日に必要なエネルギーを摂取しなければなりません。そのため一度に食べる食事の量が多くなってしまいがちですが、一度に食べる食事の量が多くなると、血糖値が必要以上に上昇してしまいます。血糖値が上昇し血液中に過剰になったブドウ糖は、使われることなく脂肪となって体内に蓄積されるため、肥満につながるのです。またビタミン、ミネラルはもともと不足しやすい成分でもあるため、1日2回の食生活が続くと、慢性的に不足する恐れがあります。ビタミンやミネラルは体の調節機能に役立つだけでなく、炭水化物(糖質)、タンパク質、脂質の代謝を助けるものとしても重要な成分です。これらの代謝がうまくいかなくなると、やはり肥満になりやすくなります。

肥満はさまざまな生活習慣病と関連しています。生活習慣病を予防するためにも、朝食を摂り、規則正しい生活を送りましょう。

卵はコレステロールを増やすので食べない方がよい?

「日本人の食事摂取基準」は、コレステロールの1日の摂取目標値を男性は750mg、女性は600mgと定めています。この数値と比較すると、1個(50g)当たりに約210mgのコレステロールが含まれる卵は、コレステロールを多く含む食品と言えます。しかし卵には血管壁にコレステロールが沈着するのを抑制し、コレステロール値を下げる「レシチン」というリン脂質が含まれています。つまり卵をたくさん食べたからといって、血液中のコレステロール値はすぐには上昇しないのです。レシチンを構成する「コリン」は、「アセチルコリン」という神経伝達物質の材料になります。脳を活性化し記憶力や学習効果を高めてくれるので、認知症の予防や改善に効果があると言われます。またコリンは血管を拡張させて血圧を低下させるため、高血圧の予防や改善の効果も期待されます。さらに卵に含まれる「リゾチーム」という酵素には抗菌・抗ウイルス作用があり、免疫力を高めてくれます。その他にも卵には、ビタミンA、B2、D、Eやカルシウム、亜鉛、リン、鉄などのミネラルも多く含まれています。私たちの体を構成する必須アミノ酸もバランスよく含まれており、しかも卵に含まれるタンパク質は人体のタンパク質組成と似ているため、卵は利用効率の高い良質の食品と言われます。

コレステロールの取り過ぎを心配するあまり、卵をはじめタンパク質を豊富に含む動物性の食品摂取を極端に減らすと、必要な栄養素の不足を招き、低栄養状態にもなりかねません。高コレステロール血症やアレルギー性疾患などで医師からコレステロールの摂取量を制限されている場合を除き、多少コレステロール値が高い人でも卵を食べることを極端に心配する必要はありません。ただし摂り過ぎないことを心掛け、1日に2個くらいまでにとどめておきましょう。

低糖質ダイエットと低脂質ダイエット、効果は違う?

炭水化物(糖質)と脂質は、エネルギーになる栄養素です。どちらも摂り過ぎると中性脂肪となって貯蔵されるため、過剰摂取は肥満や脂肪肝の原因になります。では炭水化物(糖質)を控える「低糖質ダイエット」と脂質を控える「低脂質ダイエット」、どちらがより効果的でしょうか?

炭水化物(糖質)を摂取すると血糖値が上昇し、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは血液中の糖質(ブドウ糖)を筋肉、肝臓などの組織に取り込ませる働きをしますが、脂肪細胞にもブドウ糖を取り込ませるため、脂肪の合成・蓄積を促す働きもあります。「低糖質ダイエット」は、炭水化物を控えることで血液中の糖質(ブドウ糖)の上昇を防ぎ、またインスリンによって生じる脂肪の合成・蓄積を制限することができます。しかし炭水化物(糖質)が不足すると、「脳」は体が飢餓状態であると判断し蓄えている体脂肪をなるべく使わないように指令を出すため、私たちの体はなかなか脂肪が減らない体質に変わっていきます。エネルギーが不足すると、筋肉はエネルギーを節約するために自らを分解します。逆にエネルギーが入ってくると、タンパク質を合成して筋肉の再生を行います。こうして筋肉は常に分解と合成を繰り返していますが、筋肉にタンパク質の合成を促すスイッチの役割を果たしているのがインスリンです。極端な低糖質ダイエットはインスリンの分泌を抑制し、筋肉の分解をより進めてしまいます。食事制限するときでも、ごはんやパンを一切食べないような「主食抜き」は避けるべきです。

一方、脂質は炭水化物(糖質)に比べるとエネルギーとして利用されにくいという性質を持つため、脂質を控える「低脂質ダイエット」は「低糖質ダイエット」と比べ効果が現れるのに時間が掛かってしまいます。しかし1gあたりのエネルギー量は炭水化物(糖質)の4kcalに対し、脂質は9kcalと2倍以上ありますので、摂取を控えることで得られるダイエットの効果は大きいと言えます。また脂質の場合、炭水化物(糖質)のようにインスリンが体脂肪の合成・蓄積に関与することはありません。栄養素として摂取した脂質は、まず肝臓に運ばれ、そこから血液中を移動し、体の各細胞をつくる材料になったりエネルギー源になったりします。中性脂肪の形から直接、脂肪細胞に蓄積が起こることはないと言われています。

つまり、比較的早めに結果を出したい場合には「低糖質ダイエット」、じっくりと長期的に行う場合には「低脂質ダイエット」が有効といえるでしょう。

高血圧や糖尿病、心臓病、脳卒中などの生活習慣病を予防するには、日ごろから規則正しい食生活・適度な運動・休養を心掛け、喫煙や飲酒などに注意し、良い生活習慣を身に付けて肥満を予防・改善することが大切なのは、皆さんもよくご存じのことと思います。しかし食生活の目的は、単に栄養を摂るということだけではありません。家族や仲間と一緒に食べることによりコミュニケーションの機会とすることもできますし、食事のマナーや料理についての関心を高め、いろいろな栄養も摂りやすくなります。何よりも、楽しくおいしく食べることは、私たちの心や人生を豊かにしてくれます。規則正しい食生活とは、「食べてはダメ」ということではありません。ちょっとした工夫や努力の積み重ねが大切です。例えば、よく噛んで少しゆっくり食べると、満腹中枢が満たされ余計に食べ過ぎてしまうことが少なくなります。食べる量を少しだけセーブするのも良いでしょう。そして食生活と同様に大切なことは、運動不足にならないように心掛け、消費カロリーを減らさないだけでなく少しでも増やすことです。

寒い季節はウォーキングなど外での運動がどうしてもおっくうになりがちです。無理して外で運動しなくても、エアロビやヨガ、ボルダリング、マシン・トレーニングなど、室内でもできる運動を積極的に行いましょう。「ジムなどの施設に行くのが大変で…」という方は、自宅でできるスクワットやストレッチ、ヨガなど、できるものを見つけ、食べた分をしっかりと運動で消費するようにしましょう。まずは、できることからチャレンジしてみてください。


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