予防医学のお話 No.37
冷えによるトラブルと対策

掲載日:2018年3月1日

冷えによるトラブルと対策

人間の体は、気温が変化しても重要な臓器が集まる体の中心部を37度前後に保とうとします。皮膚が「寒さ」を感知すると、その情報が脳の「視床下部」に伝えられ、ここから体温を一定に保つよう指令が出されます。血管を収縮し、血流量を減らして体の中心部に血液を集め、体温を維持しようとします。また寒いと体がふるえるのは、筋肉をふるわせて体温を上げようとする反応です。逆に暑さで体温が上がりそうなときは、血管を拡張して血流量を増やし、血液を全身に分散して熱を放出したり、汗をかいて熱を逃がすように調整しているわけです。

気温が低くなると体の末端に血液が行き渡りにくくなるため、手先や足先の温度が下がりやすくなります。寒い時季に冷えを強く感じるのは当然のことですが、「夏なのに体が冷えている」「手足の先端がかなり温まりにくい」「体が冷たいと感じる」など、慢性的に冷えているように感じる方がおられます。一般に「冷え性」として知られる症状ですが、実は医学的には「冷え性」という病気は存在しません。明確な定義がなく、検査方法も確立していません。あえて病名をつけるなら「末梢神経の血流障害」といったところでしょうか。血液の流れが悪く、体温調節機能がうまく働かない状態です。

体温調節の不調は手足や体の冷え以外にも、肩こりや頭痛、下痢、月経困難、膀胱炎などを引き起こすことがあります。また免疫機能が低下して風邪をひきやすくなったり、酵素の働きが悪化して栄養素の吸収や代謝にも影響を及ぼします。基礎代謝が低下すると、エネルギーの消費量が減少するため太りやすくなります。まさに「冷えは万病のもと」なのです。

いわゆる冷え性の主な原因としては、次のようなことが考えられています。

〇 自律神経の乱れ

空調の効いた室内に長くいると、室内外の温度差が大きいときに体温を調節する自律神経がうまく機能しなくなります。またストレスや不規則な生活などでも、自律神経が乱れる場合があります。

〇 食生活の乱れ

炭水化物(糖質)、タンパク質、脂質の3つは三大栄養素と呼ばれ、私たち人間の生命維持や身体活動などに欠かせないエネルギー源となっています。過度のダイエットなどで極端に偏った食事や量の制限をしていると、エネルギーの不足から冷え性になることがあります。また三大栄養素を摂っていても、それをエネルギーに変えるビタミン、ミネラル、酵素などが不足すると冷え性になる場合があります。

〇 女性ホルモンの乱れ

エストロゲン(卵胞ホルモン)は細い血管を広げて血液の流れをよくしています。しかしその分泌が乱れると、血行不良になり冷え性につながります。ストレスが多かったり、更年期になったりすると、女性の心身をコントロールする女性ホルモンの分泌が乱れ、血行の悪化などを促進することがあります。

〇 血液循環の悪化

貧血の95%は鉄欠乏性貧血です。鉄分を体の中に吸収しづらい傾向があると貧血になり、冷え性にもつながってきます。また低血圧や血管系の疾患がある人も、血流が滞りがちになります。

〇 筋肉量が少ない

筋肉は体内で最も多くの熱を産生する器官です。筋肉運動による発熱や血流量が少ないことも、冷え性につながります。筋肉量が少ない人や、運動量の少ない人は冷え性になりやすいと考えられています。

〇 病気によるもの

膠原病、甲状腺機能低下症、閉塞性動脈硬化症、レイノー病、バージャー病なども冷え性に似た症状が現れます。次のような症状がみられる場合は、ほかの病気が隠れている可能性がありますので専門家に相談しましょう。

  • ・手足だけではなく、全身がむくんでいる。
  • ・はっきりした原因が特定できないのに、冷えがひどい、極端に冷えていると感じる。
  • ・夏に空調が効いている、効いていないにかかわらず冷えがひどく、全身の重だるさが回復しない。
  • ・氷や冷たい水などに触れた後、冷えが治らず、血の気がなくなってきた。

冷えを予防するには、日頃から体を内側から温め、血行を良好にし、自律神経をきちんと機能させておく「温活」を実践することが大切です。

1 体を温め、血行をよくする食事を摂る

にんじん、ごぼう、しょうがなど、土の中にできる野菜(根菜類)は、体を温めてくれる食材と言われています。根菜はスープや煮物など温かい料理で食べることが多く、ビタミンE、Cや鉄分などをはじめとするミネラルを多く含むため、血行促進・代謝アップが期待できます。

2 筋肉量を増やす

一般に脚には全身の約7割の筋肉が集中していると言われていますので、特に下半身を動かすストレッチやスクワット運動などの筋肉トレーニングは効果的です。また軽いウォーキング等の有酸素運動は、全身をくまなく使って酸素をより多く体にとり入れることで血行が促進され、血流が体を内部から温めます。1日に30分以上歩くよう心がけましょう。適度な運動には筋肉量アップとともに自律神経の機能を高める効果もありますので、ぜひ習慣にしたいものです。また水分不足も血行不良の原因となりますので、運動の際は特に水分補給を心がけましょう。

3 入浴の仕方を変える

自律神経は温度差にとても弱いので、急に暑くなったり寒くなったりするのを嫌います。入浴の際は、まずはかけ湯をして温度に体を慣れさせてから、38~40℃のぬるめのお湯にゆっくりと浸かりましょう。入浴剤の中には、体を温める効果の高いものもあります。使用すると、体の隅々まで血液が行き渡り、より体の芯から温まります。42℃以上のお湯での長風呂は、自律神経のバランスを乱してしまいます。熱いお湯は血管を収縮させ、手足の末端の血流が悪くなります。本来なら体温と同じくらいの温度の血液が全身に流れるところが、暖かい血液が全身に巡らなくなってしまうのです。

ホルモンバランスや筋肉量の観点から、一般に冷え性は女性に多いと考えられています。しかし、最近では男性でも手足の冷えを訴える方が増えています。ストレスや毛細血管の動脈硬化に起因する可能性も考えられますので、コレステロールや中性脂肪の高い人は要注意です。LDLコレステロールや中性脂肪値を下げるには、DHAやEPAなどオメガ3系の油を摂り、運動を心がけることが重要です。また無理なダイエットや、血液の循環を悪くするたばこは控えましょう。規則正しい生活をして、十分な睡眠をとり、ストレスをためないことが大切です。

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