予防医学のお話 No.34
腸内細菌と免疫

掲載日:2017年12月01日

腸内細菌と免疫

ヒトをはじめ哺乳動物は、母親の胎内では無菌の状態にあります。産道を通ってこの世に誕生する過程で母親の腸内細菌や空気中の細菌と接触するところから、菌との関わりが始まります。その後も周囲の人々との接触や飲食物を介して、また外部の環境に触れることにより、様々な経路で微生物に感染し、その微生物の一部が体内に定着して行きます。ヒトの場合、おとなの腸内には1,000種類以上、約1,000兆個、重さにして約1.5kgもの細菌が生息していると言われます。

これらの腸内細菌は、有用菌(善玉菌)・有害菌(悪玉菌)・日和見菌と大きく3つのグループに分類され、種類ごとに密集して腸内細菌叢(腸内フローラ)という“縄張り”を作っています。腸内細菌が生息できる場所は限られているため、善玉菌と悪玉菌は機会あるごとに縄張り争いを繰り広げています。日和見菌は、善玉菌と悪玉菌のバランスが不安定になると勢力を伸ばし、優勢な菌と同じような働きをする性質を持っています。

乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、消化されにくい食物繊維やオリゴ糖を分解・発酵させ、乳酸・酢酸・酪酸など有機酸を産生します。またビタミンB群やビオチンを産生し、一部のホルモンを活性化させます。善玉菌により産生された有機酸は腸内を弱酸性にし、悪玉菌による腐敗の進行や悪玉菌自体の繁殖を抑えて、善玉菌が優勢になるのを助けます。そして善玉菌が優勢になることの最大のメリットは、“腸管免疫”が活性化されるという点にあります。

口から入ってきた食べものに含まれる栄養成分は腸管から体内に吸収されますが、同様に病原細菌の多くも口から入り腸などを通して体内に侵入します。これらの侵入物から身体を守るため、腸管には最大規模の免疫器官が配置されています。身体全体の免疫細胞や抗体(病原細菌と戦うタンパク質)の60%以上が腸に集中しています。例えるならば、城内(体内)に敵(細菌やウイルス)が侵入しないように、門(腸管)に番兵(免疫細胞や抗体)を多数配置して城の守りを固めているわけです。

免疫力を高めるには、腸管免疫が機能できるように善玉菌が優勢な腸内環境を整える必要があることはおわかりいただけたと思います。しかし私たちの身体は、加齢とともに腸内環境を維持するのが難しくなるとも言われています。腸を支える筋力が低下し、腸の蠕動運動が緩慢になると、食べものの残りかすが腸に長くとどまりやすくなり、腐敗の原因となります。すると腸内フローラのバランスが崩れて悪玉菌が優勢になり、善玉菌が減少してしまいますので、有用菌(善玉菌)を積極的に摂取すること、その餌となる食物繊維やオリゴ糖を摂取すること、食バランスや運動習慣、ストレス管理や睡眠時間など生活習慣を見直すことで、腸内環境を活性化させる生活スタイルを身に付けていきましょう。

私たちは自分にはないものを補ってもらいながら腸内細菌と共生しています。腸内細菌によって健康が保たれていることを忘れてはいけません。

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