予防医学のお話 No.33
脂肪肝

掲載日:2017年11月01日

脂肪肝

肝臓は人体最大の臓器で、その重さは成人の場合1.0~1.5kg、体重の約1/50に及びます。食事から摂取した栄養素を、身体が生命を維持するために利用できるように加工する化学工場のような役割を担い、主に次の4つの働きをしています。

1
小腸で吸収したブドウ糖、果糖、アミノ酸、脂肪酸などの栄養素を貯蔵し、必要に応じて身体を動かすエネルギー源や身体組織を形作る成分に分解・合成する。
2
アルコールや薬物、細菌、老廃物などの有害物質を分解し、無害な物質に変える。
3
脂肪の消化吸収を助ける胆汁を生成・分泌産生する。
4
古くなった赤血球を分解して、ビリルビンや鉄分を生成する(ビリルビンは肝臓で処理され胆汁の材料となり、鉄分は新しい赤血球の材料になる)。

肝臓は非常に再生能力が高く、たとえ半分を切除したとしても4か月~半年も経過すればまた元の大きさに戻り肝機能もほとんど回復します。肝細胞のかなりの部分が破壊されるまで自覚症状が出ないことから、「沈黙の臓器」と呼ばれることもあります。そんな肝臓が最もかかりやすい病気が「脂肪肝」です。

脂肪肝は、肝臓の細胞内に中性脂肪が過剰に蓄積する病気です。脂質や糖質の摂り過ぎや運動不足など、エネルギーの摂取と消費のバランスが崩れると、使い切れなかった脂肪酸やブドウ糖が中性脂肪として肝臓に蓄えられます。健康な肝臓には2~3%の脂肪が存在しますが、脂肪肝は蓄積した脂質が肝臓の30%以上を占める状態です。

脂肪肝には、アルコールが原因の「アルコール性脂肪肝」と、アルコールが原因でない「非アルコール性脂肪肝」があります。アルコール性脂肪肝は、体内に入ってきたアルコールを体外に排出する解毒の過程で、また肝臓の機能に異常が生じることで、中性脂肪が合成されやすくなり肝臓に蓄積していきます。非アルコール性脂肪肝は、食事から摂取するエネルギーが多く、肝臓に運ばれる脂肪酸の量が多くなることが原因です。実は日本人には、飲み過ぎによるアルコール性脂肪肝よりも、食べ過ぎによる非アルコール性脂肪肝が多いと言われています。「お酒を飲まないから自分は大丈夫」と安心はできないのです。

アルコール性脂肪肝は「アルコール性脂肪肝炎(ASH:アッシュ)」へと進行することがあります。アルコール摂取が原因で肝臓に炎症が起こった状態で、肝細胞が急激に壊れて壊死したり、線維化により肝臓が正常に機能していない状態で、肝硬変の前段階とされています。そのまま暴飲を続けると、肝硬変や肝がんにつながる危険性があります。非アルコール性脂肪肝には、症状が軽く改善しやすい「単純性脂肪肝」と重症化しやすい「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)」があります。NASHは放置すると肝臓に継続的に炎症が起こって線維化が生じ、肝硬変、肝細胞がんへと進行しやすいことから近年注目されています。脂肪肝からNASHに進行するメカニズムは、まだはっきりと解明されていませんが、NASHの前段階には必ず脂肪肝があり、活性酸素による酸化ストレスなどの要因も加わり、肝臓の炎症が起こるというケースも見られます。NASHは脂肪肝の約1割にみられ、中年から高年齢層に多く、性差はないと言われます。日本人はNASHになりやすい人種とも言われていますので、注意が必要です。

従来、脂肪肝は急激な炎症や細胞破壊を引き起こさないため、肝臓に中性脂肪が蓄積するだけの心配のない病気と考えられてきました。しかしNASHへの進行のほか、狭心症や心筋梗塞など心疾患の合併率が高く、生活習慣病の温床となることが分かってきました。脂肪肝自体には痛みなどの自覚症状はほとんどありません。しかしそのまま放置すると、病状が進行してしまう可能性があるため、健診などでのチェックが欠かせません。

生活習慣が原因の脂肪肝の予防・改善には、生活習慣の改善が欠かせません。内臓脂肪や皮下脂肪と違って、肝臓についた脂肪は落ちやすいと言われます。しかし一方で「脂肪は肝臓からつく」という特徴があります。一時的に脂肪が減っても、生活習慣が元に戻れば再発してしまいます。食べ過ぎ・飲み過ぎに気を付け、運動する習慣をしっかり身に付けましょう。また活性酸素が発症に関係しているので、予防にはビタミンやミネラル、抗酸化物質の多い食品を積極的に摂ること、特にビタミンB群は肝臓の機能を活発にするので忘れずに摂取しましょう。また間食を控えること、睡眠時間を十分にとること、ストレスをためないことも肝臓の健康には必要なことです。

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