予防医学のお話 No.29
低体温

掲載日:2017年07月03日

低体温
哺乳類や鳥類は、いつも体温を一定の状態にしようとする仕組みを体内に持つ「恒温動物」です。人間の場合、代謝によりつくり出されたエネルギーの75%以上が熱に変換され、体温の維持に用いられています。体温は病気にかかっていなくても、運動、時間、気温、食事、睡眠、感情の変化、女性の場合は性周期など、様々な要因により変動しますが、通常、一日のうちの体温変化はほぼ1℃以内におさまっています。

体温は、脳の視床下部にある体温調節中枢でコントロールされています。例えば体温が下がってくると、体温調節中枢は皮膚の血管を収縮させる指令を出します。熱の損失を減らし、ふるえや筋肉の硬直などにより熱の産生を高め、体温を通常の状態に戻し一定に保つように働きます。

「平熱」とは、健康な人の平常の体温のことです。こどもはやや高くお年寄りはやや低い傾向がありますが、身長や体重と同様に、平熱にも個人差があります。1957年、10歳から50歳前後の健康な男女3,000人以上の体温を調査した結果が報告されています。この調査による体温の平均値は36.89℃±0.34℃(ワキ下検温)で、全体の約7割の人が36.6℃から37.2℃の範囲に入っていました。

人間の代謝やホルモン、消化液、酵素などは、体温が37℃前後の時に最もスムーズに働くようにできています。体温が42℃を超えると体内の酵素系に障害が起こり始めますが、海や山での遭難で急に体が冷えた場合や、急性アルコール中毒や脳疾患などで意識障害を起こし、そのまま寒い場所に放置されるなどで深部体温(直腸温、膀胱温、食道温、肺動脈温など)が35℃以下に低下してしまうと、「低体温症」という死につながることもある重篤な疾患となります。

「低体温症」と異なり、「低体温」というのは疾患(病気)ではありません。医学的に厳密な定義があるわけではありませんが、一般的に体温が35.5℃近辺の状態を指します。体温調節の働きがうまく行なわれず、熱の損失に対して熱の産生が間に合わないような状況になると、低体温になると言われます。

体温調節機構のバランスが崩れる原因には、次のようなことが考えらます。
  • ・ホルモンバランスの失調による「更年期障害」、
  • ・冷暖房の普及による「体温調節機能の低下」、
  • ・冬でも薄着のような「服装による寒さ対策の不備」、
  • ・無理なダイエットによる「基礎代謝の減少」、
  • ・「ストレスや緊張」など

症状が悪化して病気になってしまう前に、きちんと対処したいものです。

体温が下がると、免疫力も低下します。体は熱を産生することで外部からの細菌の侵入を防ぎ、体内の細菌バランスを保っています。しかし、体温が低下するとリンパ球が活性化されず細菌と戦えないため、風邪や感染症にかかりやすくなったり、アレルギーになりやすくなったります。

体温が下がると、がん細胞が発生しやすくなります。がん細胞は体温35℃を好むと言われています。低体温によって免疫細胞の力が弱くなり、がん細胞を掃除することが困難になるため、がん細胞が増えたままになってしまいます。がん細胞は毎日3,000~6,000個作られると言われますので、低体温が続くことでよりがんになりやすくなると考えられます。

体温が下がると、基礎代謝も低下します。エネルギー産生が減り脂肪を燃焼しにくくなるため、太りやすくなります。また作り出すエネルギーが少ないために、消化能力も落ちてしまいます。胃腸の調子も悪くなり、肌荒れ、便秘など様々な不定愁訴が出てきてしまい、活動的な生活を送ることが難しくなります。体内酵素の活性も低下しますので、栄養を十分に吸収できず、エネルギーを作り出ないため、疲れやすい状態になります。神経やホルモン系のバランスが崩れるため、免疫や自己治癒力が弱まるなど、生命維持活動に支障をきたしてしまいます。

低体温は、日頃の生活習慣を少し見直すだけで改善されます。
  1. 1 規則正しい食生活
  2. 2 運動など体を動かす
  3. 3 ストレスをためない
  4. 4 入浴はシャワーだけでなく、湯船にしっかりと、かつゆっくりと浸かる
  5. 5 睡眠時間はしっかり取る
  6. 6 体を冷やすような服装は控える

皆様も心がけてみてはいかがでしょうか。
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