予防医学のお話 No.28
歯周病

掲載日:2017年06月01日

歯周病
歯を失う最大の原因が虫歯ではなく歯周病だということをご存じでしょうか?

歯周病は、細菌感染によって引き起こされる炎症性の疾患です。以前は「歯槽膿漏」(しそうのうろう)と呼ばれ「歯ぐきの炎症」と認識されていましたが、歯を支える土台である歯槽骨にも影響が及び、歯を失うばかりでなく、炎症性物質が血流に入ると様々な全身疾患を引き起こすことから、生活習慣病として位置づけられるようになりました。メタボリックシンドロームや心臓病、動脈硬化、肺炎などの発症、糖尿病のコントロールへの悪影響、さらに早産や低体重児出産などとの関連が報告されおり、成人の8割以上に歯周病があるともいわれています。

歯周病は、歯肉溝(歯と歯ぐきの間)に付着・蓄積した歯垢(ミュータンス菌などの細菌と代謝物のかたまり)が古くなり、歯周病細菌が繁殖して毒性の強い歯垢に変化し、歯肉に炎症が起こることが発端です。正常な歯肉溝は1~2mm程度ですが、炎症により歯肉が腫れると溝が深くなり、2mmを超えると「歯周ポケット」となります。進行すると歯肉は赤みを帯び、歯磨きにより出血します。また唾液が少しねばねばした感じになります。やがて硬いものを噛むと痛みを感じるようになり、重症化すると歯肉の腫れがさらに大きくなり、歯垢が歯周ポケットの内部に貼り付いてきます。歯周病菌が歯周組織に侵入するため、歯を支える土台である歯槽骨も破壊され始めます。唾液中のカルシウムが沈着して歯石となり、歯の根を覆い始め、歯肉から出血する、疲れると歯肉が腫れる、歯肉を押すと膿が出る、歯がぐらつく、強い腐敗臭がする等の症状が出てきます。

また歯周病は、歯磨きの習慣が不適切、または頻繁に歯磨きをしていても適切に歯垢が除去できていないなど口腔衛生が不十分であること、喫煙による歯周組織の血流量と組織の修復力の著しい低下、歯ぎしりなど異常な噛み合わせの強弱の連続による歯へのダメージにより悪化することがわかっています。

歯周病は重症化しなければこれといった症状はありませんが、歯周ポケットが深くなった状態では、歯科を受診しても元通りに完治するのは難しく、歯肉が痩せて後遺症が残ります。ポケットが3~5mmの頃までが、完治が望める治療の目安です。大切なのは、自覚症状のないうちから予防・口腔ケアを始めることです。

一次予防は、ご家庭における口腔ケアです。以下の点を意識しましょう。

1 唾液の分泌量や粘度を適切に保つ。
唾液には様々な機能がありますが、歯や歯間に付着した食べかすや歯垢を洗い流す(自浄作用)、口の中の細菌の増殖を抑える(抗菌作用)など、口内を清潔に保つうえで大変重要な働きがあります。唾液の分泌や粘度を適切に保つには、適度な水分補給が必要です。また「噛む」という行為は、唾液腺を刺激して唾液の分泌を促します。普段から「よく噛む」ことを心がけましょう。

2 間食を減らし、糖分を頻繁に摂食しない食習慣を心がける。
歯周病菌は口の中の糖分をエネルギーにして繁殖します。またその際に生じる代謝産物が歯垢となります。例えば間食は1日1回、数分で食べたり飲んだりできる量にし、間食後は、すぐに歯磨きやうがいをして、口の中に糖分が残る時間や頻度を少なくしましょう。

3 酸蝕症(さんしょくしょう)に気を付ける。
酸蝕症とは、歯が酸性の飲食物や胃液によって溶かされる疾患です。炭酸飲料やレモンなどを長時間慢性的に歯面に接触させないよう、ダラダラ時間をかけて食べたり飲んだりすることは避けましょう。

4 しっかりとブラッシング(歯磨き)する。
食事の後は口内の細菌の活動が活発になるので、毎食後の歯磨きは確かに理想的です。しかし歯磨きは、量より質が大事だとも言われます。不十分な歯磨きを1日3回毎食後にするよりは、就寝前の1回だけでも、しっかり時間をかけて丁寧な歯磨きをする方が効果的です。

5 起床時に舌を洗う。
口内の汚れは舌の表面にも蓄積します。特に唾液の分泌が少なくなる就寝中は、汚れが蓄積しやすい時間帯でもあります。この汚れが雑菌の繁殖する温床になるため、起床後に舌に蓄積した汚れを洗い流しましょう。むやみにゴシゴシ擦ると舌粘膜に負担をかけるので、1日1回で十分です。毛の固さがやわらかめの歯ブラシか専用の舌ブラシを使って、口の奥から手前に向かって、やさしくなでるようにブラシを動かします。同じ箇所に何度もブラシを当てないように、またブラシに付いた汚れを水道の水で洗い流しながら行なうのがポイントです。

6 歯磨きの後に殺菌性のうがい薬でうがいをする。
菌の増殖を抑えることが期待できます。

二次予防は、歯科での定期的なプロフェッショナルケアです。毎日の歯磨きだけでは十分に落としきれない頑固な歯垢や歯石を専門的な定期クリーニングでケアしていきましょう。
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