予防医学のお話 No.27
ロコモティブシンドローム

掲載日:2017年05月01日

ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)とは、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器が衰えて、「立つ」「座る」「歩く」といった動きが困難になり、介護が必要になったり寝たきりになってしまうこと、または、そのリスクが高い状態のことです。運動器自体の疾患と、加齢による運動器の機能不全が大きな原因と言われており、現在、ロコモティブシンドロームに陥っている人は、予備軍も含め4,700万人以上とされています。

運動器の不調に悩む人は50歳を過ぎると急増し、70歳代で最も多くなっています。私たち日本人は世界トップレベルの長寿を誇っていますが、その分、筋肉や骨、関節などの運動器を酷使し続けているとも言えます。運動器は連携して機能するため、どれかひとつの運動器に不調を生じると、今まで当たり前のように行っていた「立つ」「座る」「歩く」などの身体活動が突如として難しくつらいものに変わってしまいます。また不調になった運動器の役割を補うために他の運動器にかかる負担が大きくなり、やがては負担を補いきれなくなった運動器までも不調になってしまいます。

例えば、骨粗しょう症の痛みによって活動量が減ると、筋力が徐々に低下してしまいます。体重を支えるなど、筋肉の役割を腰や膝などが補うようになりますが、その負担により、やがて膝の関節にある軟骨がすり減ってしまいます。すると膝に痛みが現れるようになり、活動量がさらに低下する悪循環に陥ってしまいます。このように運動器の不調は、日常生活だけでなく健康寿命も脅かしてしまうのです。

青年期や中年期の人にはまだまだ実感がわかないかも知れませんが、運動器の衰えは誰にでも確実に訪れます。加齢による衰えだけでなく、運動不足などによって骨格筋があまり使われないと、筋組織は弾力性を失い機能が低下します。健康な人でも、横になって寝たまま1週間程度過ごすだけで、歩くことさえ難しくなる場合があるのです。骨格筋が衰えるスピードは、努力次第で遅くすることができるので、日頃から運動して鍛えておきましょう。

一般に運動は、ラジオ体操のように身体を動かすことに重きを置いた「整える運動」と、筋力の向上を目的とした「鍛える運動」に大別されます。運動器の衰えを抑えるのに適しているのは「鍛える運動」です。「鍛える」と言っても、ジムやプールなどに通うことばかりでなく、電車や車ではなく徒歩や自転車で移動する、積極的に階段を利用する、料理をしながらつま先立ちをする、テレビを見ながら腹筋やストレッチを行うなど、すぐにでも始められることがたくさんあります。身構える必要はありません。まず大切なのは、日常からこれらのことを意識して生活し、毎日続けることです。

骨格筋や骨は、食事によっても影響を受けます。近年、ロコモティブシンドロームが広く知られるようになった一方で、誤った食事制限による栄養素の不足が運動器に及ぼす悪影響が問題視されています。食事を抜くと、不足したエネルギーを体内で調達するために、骨格筋や骨に存在するタンパク質が分解されます。これが習慣化してしまうと、やがては深刻な骨格筋量や骨量の低下状態に陥ります。

タンパク質は骨格筋だけでなく、骨の材料にもなります。タンパク質は何種類ものアミノ酸によって構成されていますが、アミノ酸は体内で合成できない必須アミノ酸と体内で炭水化物や脂質などから合成できる非必須アミノ酸に分類されます。いずれのアミノ酸も骨格筋の材料となりますが、特に必須アミノ酸が不足することのないよう、毎回の食事で意識して摂取するようにしましょう。
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