予防医学のお話 No.18
高血圧

掲載日:2016年08月01日

高血圧

血圧は血液が流れる際に血管にかかる圧力で、心拍出量(血液の量)や末梢血管抵抗(血管を流れるスムーズさ)により変動します。一般に心臓の収縮時(心臓から血液を押し出した瞬間)と拡張時(収縮した心臓が拡張する瞬間)の血圧を測定して高血圧か低血圧かを判断しますが、日本高血圧学会では収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上を高血圧と定義しています。

高血圧には自覚症状があまりないため、健康診断等で「血圧が高い」と指摘されても放置する方が多いのが実状です。しかし血管に圧力がかかった状態が続くと血管が硬くなり、硬くなった血管に血液を送り込む心臓にも多大な負担がかかります。負担により心肥大(心臓の筋肉が厚くなり肥大化した状態)になると、心筋梗塞や狭心症、心室性不整脈などのリスクが高まります。高血圧の人が心筋梗塞などの心臓病になる確率は、健常者の3倍になるとも言われています。また脳の動脈が硬化すると脳の一部や頸動脈の血流が悪くなり、脳梗塞のリスクも出てきます。自覚症状がないまま合併症を進行させ、ある日突然命にかかわるような事態を引き起こすことから、高血圧は別名「サイレント・キラー(沈黙の殺人者)」とも呼ばれています。

血圧が高くなる体内のメカニズムは非常に複雑で、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられます。高血圧治療には「薬物療法」と「非薬物療法」とがありますが、薬物療法の目的は薬で血圧を抑えて臓器障害や合併症を予防することです。あくまで対症療法で、根本的な原因の改善ではありません。非薬物療法には、食事療法、運動療法、生活療法の3つがありますが、どれか1つでも不十分だとうまくいきません。つまり生活習慣全体を見直し、改善していくことが重要なのです。

まずは食事ですが、昔から塩分を摂り過ぎると血圧が上昇すると言われています。これは塩分の摂り過ぎにより血中のナトリウム濃度が上昇すると、ナトリウム濃度を一定にするため周囲の細胞から水分が血管内に吸収され、血液量が増えるためです。日本高血圧学会は、塩分摂取を1日6g未満に抑えるよう推奨しています。香辛料や薬味を上手に使う、インスタント食品やレトルト食品などの加工食品はなるべく避けるなど、減塩を意識しましょう。

一方、野菜やいも類、豆類に含まれるカリウムは、ナトリウムの排泄に役立ちます。小魚や乳製品に含まれるカルシウム、ごまやナッツ類に多く含まれるマグネシウムも血圧のコントロールに役立つと言われていますので、忘れずに摂取したいものです。また食物繊維はナトリウムの害を減らし、コレステロールの低下や肥満予防にも役立ちます。

血管を柔軟に保ち、動脈硬化を予防するには、良質のアミノ酸、ビタミンB2やビタミンEも欠かせません。青魚に含まれるDHAやEPAは末梢血管抵抗を下げ、心臓病や脳血栓の予防に役立つと言われています。積極的な摂取をこころがけましょう。

心臓などに疾患のない方や合併症をお持ちでない方であれば、運動することをお勧めします。全身を動かして大量の酸素を取り込む有酸素運動を無理なく続けることが効果的とされています。例えばウォーキング。単なる「散歩」ではなく「運動」という意識で、背筋を伸ばし、胸を張り、腕を大きく振って歩幅を大きく歩いてみましょう。2日に1回、できれば毎日、継続して30分以上続けることが理想です。

運動が苦手という方は、階下に降りる時だけでもエレベーターやエスカレーターではなく階段を使ってみましょう。足首の曲げ伸ばしや足首を回す動作でふくらはぎの血行をよくするのも有効です。心臓が血液を全身に送るポンプならば、「第2の心臓」と呼ばれるふくらはぎは、下半身の血液を心臓に戻すポンプ。叩いたり、もんだりして刺激を与えることで血液循環がよくなり、血圧を下げることが期待できます。

ストレスも血圧を上昇させる要因となります。例えば「普段はそれほど高くないのに、健康診断や病院で測定すると血圧が高くなる…」という話を聞いたことはないでしょうか?これは「白衣高血圧」と呼ばれ、白衣の医師や看護師を前にした緊張感がストレスとなって血圧を上昇させるのだと考えられています。また競争心や攻撃性が強くいつも苛立ってせかせか行動する人、完璧主義の人はストレスがたまりやすいようです。マイペースでのんびり、を目指してみましょう。まずは食事、歩行、会話をゆっくりすることからはじめてはいかがでしょうか?

またできるだけ睡眠時間を確保する努力をしましょう。必要な睡眠時間は人それぞれですが、自分にとって最適な睡眠時間が確保できないと、気付かないうちに疲労やストレスがたまり、血圧が上昇することもあります。

入浴は血管を広げ血行をよくするため、血圧を下げる効果があります。また疲労回復やストレスの解消にも効果的です。40℃くらいのぬるめのお湯で、長湯をしないこと、寒い季節は脱衣所や浴室を暖かくすることがポイントです。

深呼吸の作用によっても血圧を下げ精神を安定させることが期待できます。鼻から肺いっぱいに息を吸い込み、吸い込んだ時の4倍ほどの時間をかけてゆっくりと吐き出してみましょう。肺胞が呼吸によって開くと作られる「プロスタグランジンI2」という物質により、血管が拡張され血圧を下げることが分っています。一日の中で瞑想や座禅など、呼吸を意識した時間を持つこともストレス社会には必要かもしれません。

自分の生活習慣を見直し、血圧を上げない理想の生活を心がけて実践したいものです。

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