予防医学のお話 No.17
疲れやだるさ

掲載日:2016年07月01日

疲れやだるさ

最近「疲れた…」「だるい…」と感じてはいませんか?
現在、日本では慢性的に疲労を感じている人が増えており、その増え方は欧米諸国と比較して顕著に大きいと言われています。

一般に「疲労」と「疲労感」はほぼ同じ意味で用いられていますが、実はまったく別のものです。日本疲労学会は、「『疲労』は心身への過負荷により生じた活動能力の低下を言い、『疲労感』は疲労が存在することを自覚する感覚で、多くの場合不快感と活動意欲の低下が認められる」としています。
「退屈な授業に出席して、特に何もせず座っていただけなのに、とても疲れた」というような経験、あるいは「やりがいのある仕事に取り組み、休日出勤や残業が続いたが、あまり疲れを感じなかった」というような経験はないでしょうか?
前者は「あまり疲労はしていないはずなのに、疲労感が大きい状態」、後者は「疲労はしているはずなのに、疲労感が小さい状態」です。このように「疲労感」は、意欲や達成感に大きく影響されますが、実際の「疲労」は、「疲労感」の大きさとは別に存在するものです。

「疲労」は、「痛み」や「発熱」とともに、生体の3大アラームとも呼ばれています。例えば身体のどこかに痛みや発熱があると、私たちは身体の異常を知覚し、痛む場所をかばったり、身体を休めたり、治療をしたりと対策を講じます。疲労も同様に身体の異常を知らせ、心身を休めるよう促してくれる大切な警報装置なのです。疲労を感じることが無いと、私たちは休むことなく活動を続け、ついには疲弊して倒れてしまうことにもなりかねません。そう考えると、やりがいのある仕事に没頭して、疲れを忘れてしまっている時ほど注意する必要があるのかもしれません。

通常疲労は、栄養と休養を十分にとれば、翌日には元気な状態に回復します。そのため疲労は生理現象のひとつとして考えられ、病気とは区別されます。しかし疲労の度合いが強くなると、病気に近い状態になることもあります。
慢性疲労は疲労の蓄積により、日常生活に支障をきたすほどではないものの疲労感が長く続く状態を言います。
日常生活に支障をきたすほどの疲労を感じたり、疲労感が6か月以上続き、頭痛、発熱、筋肉痛、のどの痛み、脱力感など風邪に似た症状の他、物忘れ、思考力や集中力の低下、うつ病に似た症状を伴う場合は、「慢性疲労症候群」という病気の可能性が疑われます。休息を取るだけでなく、医師による診断と適切な治療が必要になります。

肉体的および精神的活動の結果生じるものであること、健康を維持するための重要な生体信号であることを考えると、私たちが生きて活動を続ける限り、疲労を完全になくすのは困難だと思われます。しかし、疲れにくい身体をつくり、疲労の程度を軽減することや、疲労からの回復を早めることは可能です。

健康のための3つの要素とされてきた「適度な運動」、「栄養バランスのとれた食生活」、「休養」は、疲れにくい身体をつくるうえでも重要です。
日頃から運動をしている人は、運動していない人に比べ疲れにくいと言われます。普段から身体を動かす習慣をつけましょう。よく歩き、姿勢をただし、体操やストレッチなど、身体の本来の機能を使う運動が大切です。
一日三食、特に朝食と昼食はしっかり摂りましょう。摂取するカロリーや栄養のバランスも大切です。特にビタミンやミネラルを意識して摂るようにしましょう。夕食を摂るのが遅かったり食べ過ぎたりすると、睡眠中に胃が休まらず翌朝まで負担がかかります。また早食いは消化不良をひきおこし、胃腸が疲れてしまいます。食事はよく噛んで、ゆっくりと時間をかけて楽しみながら摂るのが理想です。
睡眠は疲労を回復させるだけではありません。睡眠中に分泌される成長ホルモンは、身体の成長、免疫力の向上、ストレス解消ももたらします。早寝早起きを心がけ、睡眠をしっかりと取り、生活のリズムも大切にしましょう。
自律神経や脳の働き、気持ちを安定させることなど、ストレスを上手にコントロールして心身ともにバランスのよい状態を保つことも大切です。趣味や旅行など、楽しい時間を作って気分転換を図るようにしたいものです。パソコンやスマートフォンの利用を控え、目を休ませること、空や海や山、緑の木々を眺めること、波の音や小鳥のさえずりに耳を傾けたり、気分に合った音楽を聴くこと、エッセンシャルオイルなどを使って香りを楽しむこと、肌触りの良いものに触れること、美味しいものを食べることなど、五感を使ってリラックスしてみましょう。

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