予防医学のお話 No.15
免疫のこと

掲載日:2016年05月09日

免疫のこと

免疫は「疫から免れる」と書きます。疫は悪性の伝染病のことなので、悪い様々な病気に対して、元々自分の身体に備わっている自然治癒力で自分を守ることです。免疫とは、自分と自分ではない物を区別して、自分ではないものを排除することによって、個体としての独立性や統一性を守る仕組みのことを言います。

人の細胞は、もともと1個の受精卵が分裂して2倍2倍と増殖を繰り返して60兆個にまで増えました。それぞれの細胞は次第に性質を変えて、やがて皮膚の細胞になったり、筋肉の細胞になったり、それぞれの内臓の細胞になって身体を形成していきます。そのさまざまな形や働きをもつ60兆個の細胞は1つの細胞から分裂してできた物なので、一つ一つに自分の目印が付いています。この目印と違う物が体内に侵入してくると、身体に害をなすものと認識されて激しく攻撃され排除される事になります。この働きを免疫システムといいます。

免疫力のほとんどは、血液中の白血球に存在しています。白血球は好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球(マクロファージ)と5つの種類があり、リンパ球はB細胞、T細胞、NK細胞の3つに分かれます。さらにT細胞にはヘルパーT細胞、キラーT細胞、サプレッサーT細胞の3種類があります。免疫という身体を守る大事なシステムは、これら何種類もの免疫細胞のチームプレーによって機能しています。

マクロファージはアメーバ状の細胞で、体内に侵入してきた異物を発見すると直ちに急行して、細菌でもウィルスでもほこりでも次々と自分の中に取り込んで消化しますが、相手が強い菌や、量が多くて処理し切れない場合はヘルパーT細胞にその異物の情報を伝達して助けを求めます。ヘルパーT細胞は免疫の司令官のような立場で、情報を受けた後、異物に対しての攻撃の戦略を立てたり、他の免疫細胞に指令を出したりします。B細胞に対して抗体を作るように指示し、キラーT細胞を活性化して攻撃に参加させたりします。マクロファージは他にもウィルスの死骸や殺傷されたガン細胞、感染細胞、寿命がきた赤血球や白血球などを掃除してきれいにする働きもしています。

リンパ球のNK(ナチュラルキラー)細胞は、血液に乗って常に全身を巡っています。ガン化した細胞やウィルス感染した細胞など、異常細胞を見つけると直ちに攻撃して殺すことでガン化や感染の拡大を防いでいます。ガン細胞は一説には毎日5000個もできると言われています。人の身体の中では毎日、このような戦いが何千何万回と行われているのです。

免疫細胞は人体の60兆個の細胞の内2兆個を占めて、その全体の重さは1kgになりますが、それらの免疫細胞の6割は腸に集中しています。それは腸の大切な役割が関係しているからなのです。この腸の免疫系のことを「腸管免疫」といいます。

身体の外の世界は多くの病原菌であふれているため、食事をしたり、呼吸をしたりすると、食物や水、空気と一緒に病原菌も体内に入ってきます。口から入り込んだ細菌の多くは胃酸で死滅しますが、この関門を通り抜けた細菌は腸へと進んでいきます。病原菌は身体にとっては外敵ですから、腸管免疫が本来なら厳しく取り締まってくれます。しかし腸管免疫が弱っていればそれを阻止する事が出来ず、大腸でその菌は爆発的に増えて腸内に棲みつき病気になってしまいます。

腸管免疫を元気にするには「腸内細菌」の活躍が何より大切です。小腸から大腸にかけてだいたい数百種類・1000兆個もの腸内細菌が棲みついています。腸にとってよい働きをする「善玉菌」、悪い働きをする「悪玉菌」、それらの中間といえる「日和見菌」の3種類に大きく分けられます。腸内細菌の総量はほぼ決まっているので、善玉が増えれば悪玉は減ります。腸内の善玉菌と悪玉菌は絶えず勢力争いをしていて、食事内容やストレス、健康状態などのちょっとしたバランスの変化によって善玉菌が優勢になったり、悪玉菌が優勢になったりします。日和見菌は状況に応じて勢力をもつ方に見方をしていく細菌です。健康な大腸では、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7の割合で分布しています。善玉菌が多くなると腸が活発に働いて、その結果全身の健康状態がよくなりますが、一方悪玉菌が多くなると腸の働きが鈍くなり、便秘などの症状が起こるだけではなく、免疫力も落ちてしまいます。また加齢と共に善玉菌が減り、悪玉菌が増えてくることも分かっていますので、毎日の食事の内容やサプリメントなど、善玉菌とその助けになる成分(食物繊維や善玉菌のエサになるオリゴ糖など)を摂ることで腸内環境の改善に努めることがとても大切です。腸は栄養素の消化・吸収にとどまらず、全身の老廃物を外に出すという、身体の解毒機能も担っていますから、腸の健康は身体全体の機能維持に欠かすことができないものです。

免疫力が強いということは風邪やインフルエンザに罹らない、ということです。細胞がガン化しても初期の段階で殺されますので発病しない、ということです。しかしさまざまな原因から私たちの免疫力は段々と弱くなってきます。

免疫力を上げましょう!
アミノ酸・タンパク質は細胞や免疫物質の構成成分で、免疫の働きを維持し、免疫力を高めるのに大きな働きをします。多糖類はNK細胞を増やしマクロファージを活性化させて免疫力を高めます。身体の隅々まで血液が流れていないと免疫細胞も届きません。血管を広げて血流をよくしましょう。適度に身体を動かすことも必要です。体温を上げる工夫をしましょう。リラックスしてストレスを溜めないことも大切です。健康は日常生活の延長線上に有ります。

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