予防医学のお話 No.5
「体に必要な栄養素~食物繊維の働き~」

掲載日:2015年6月30日

「体に必要な栄養素~食物繊維の働き~」

植物性食品に含まれる繊維類は植物の細胞を構成する成分で、栄養学的には炭水化物に属します。しかし繊維類を消化する酵素が消化液中には存在せず、酵素では消化されない難消化成分が繊維のほかにも種々存在し、それらを総称して食物繊維(ダイエタリーファイバー)と言います。現在では食物繊維は、健康維持のために大切な働きがたくさんあることがわかり、第六の栄養素とよばれるようになりました。

食物繊維の生理作用としては、
食物の消化管内の滞留時間を短縮させ、便量や排便の回数を増加させる・・・食物繊維は消化されないうえに、スポンジのように水分を吸収しゲル状に膨れます。内容物の量が多くなりますので、腸はそのような膨れた食物繊維を含んだ内容物を蠕動運動で先へ先へと送ろうとします。そのため食物繊維が多いと、内容物の腸内における滞留時間が短縮され、排泄をスムーズにします。小腸や大腸は合わせて7~8mにも及ぶ細長い臓器ですから、食べ物の質によっては滞留時間が伸びてしまいます。滞留時間の延長は大腸の終わりの部分、すなわちS状結腸や直腸の部分でおこりやすくなります。食物繊維が多いと、この部分をサッサと通過して、容易に排泄されることになるのです。乳製品や肉の、特に脂身の多い部分ばかりを食べ過ぎると、消化吸収されるまでの停滞時間が長く、不要物の排泄まで時間がかかるために体には様々な影響が出てきます。

腸管内で胆汁酸や重金属類を吸着する・・・腸内には、食物に含まれるコレステロールだけでなく、肝臓で合成される胆汁に含まれるコレステロールも存在します。脂肪、特に動物性脂肪をたくさん摂取すると、そのどちらの量も増加します。これがそのまますんなり排泄されればよいのですが、腸管から吸収をされると血液中のコレステロールが増加し、動脈硬化の原因にもなります。また脂肪をたくさんとると、その消化に必要な胆汁酸の分泌量も増えますが、胆汁酸は腸内で、悪玉腸内細菌などの作用により発がん作用のある成分へと変わることもあります。そのため、便秘状態では発がん物質も増えます。つまり大腸がんが発症しやすいことになります。食物繊維を充分とれば、このような発がん物質を吸着して排泄してしまうために、その危険性はずっと少なくなり、血中コレステロールの上昇を抑制していくわけです。

腸内細菌叢を活性させる・・・人間の腸内には1000種類、1000兆個の腸内細菌が繁殖し、共生していると言われています。それらは食物繊維など消化吸収されないものを餌として繁殖しています。腸内細菌は体にとって必要なビタミンB1、B2、ビタミンK、ナイアシン、葉酸、などを合成して体に供給しています。腸内細菌はまた、外部から侵入するウイルス、腐敗菌や化膿菌などを抑えていく働きや、体の免疫の仕組みを強くするのに役立ったりしています。

腸内の善玉菌を増やす・・・ビフィズス菌などの有用菌を増やし、ウェルシュ菌などの有害な腐敗菌を減少させ、腸内環境を整える。肉などを食べ過ぎたときは臭い便やガスが出るのは、タンパク質が腐敗菌などの作用で分解(腐敗)したためです。そのほか、様々な毒物が作られたりしますが、食物繊維を餌として繁殖する善玉菌の多い腸内環境の場合は、便もガスも臭くないのが特徴です。まさに赤ちゃんの便が臭くないのはそのためです。

血糖の上昇を遅らせたり血圧を下げる働きも・・・食物繊維が多いと食物の胃内停滞時間が長いので、小腸におけるでんぷんの消化吸収を遅らせることになります。その結果、でんぷんの消化産物であるブドウ糖の血糖増加速度が遅く、かつ、ゆるやかになって血糖の上昇を抑えようとするインスリンの分泌も少なくてすみます。またナトリウムと結びついて、便と一緒に排泄させるため、血圧を下げる効果があります。

予防医学のお話一覧へ戻る
このページの先頭へ戻る