食物繊維

食物繊維ってなに?

食物繊維イメージ

食物繊維とは、ヒトの消化酵素では消化されない、食物に含まれている難消化性成分の総称です。消化されずエネルギーとして利用できないため「食べ物のカス」とされ、長年役に立たないものと認識されていましたが、近年有用性が理解されるようになり、現在では厚生労働省が制定する「日本人の食事摂取基準」で、成人男性で一日20g以上、成人女性で一日18g以上摂取することが望ましいとされています。しかし食生活の変化から、日本人の食物繊維摂取量は年々減少する傾向にあります。1952年には一日平均20.5g摂取していましたが、2015年の平均値は14.5g。およそ60年の間に3割ほど減少しているのです。

食物繊維の働き

水溶性・不溶性食物繊維

食物繊維は、大きく「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」に分類されます。

水溶性食物繊維には、ペクチン、グアーガム、グルコマンナン、βグルカン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン、アラビアガム、難消化性オリゴ糖、マルチトール、サイリウム、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、フコイダン、ポルフィラン、ラミナランなど多種類のものがありますが、アラビアガム、コーンファイバー、難消化性デキストリン、フラクトオリゴ糖などが、食品素材としてよく利用されています。粘着性があり胃や腸の中をゆっくり移動するため、腹持ちがよく食べ過ぎを防ぐのに役立ちます。また糖質の吸収をゆるやかにして食後血糖値の急激な上昇を抑える他、胆汁酸やコレステロールを吸着して体外に排泄し、さらに腸の粘膜を守り、ビフィズス菌など善玉菌を増やし、腸内環境を整えるはたらきがあります。

不溶性食物繊維には、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサンなどがあります。
胃や腸で水分を吸収して膨張し、腸を刺激して大腸の蠕動運動を活発にして便通を促進する働きがあります。

食物繊維を含む食品

水溶性食物繊維は、りんご、バナナなど果物類や、ワカメ、昆布など海藻類、オクラ、モロヘイヤなどに比較的多く含まれています。

不溶性食物繊維は、ゴボウ、菜の花、カボチャなどの野菜や、インゲン豆、ひよこ豆、大豆などの豆類、さつまいも、ジャガイモなどのいも類、エノキやしいたけなどのきのこ類に比較的多く含まれています。

水溶性食物繊維 不溶性食物繊維
・ペクチン
・グアーガム
・グルコマンナン
・βグルカン
・難消化性デキストリン
・ポリデキストロース
・イヌリン
・アラビアガム
・難消化性オリゴ糖
・マルチトース
・アガロース
・アルギン酸ナトリウム
・カラギーナン
・フコイダン
・ポルフィラン
・ラミナランなど
・セルロース
・ヘミセルロース
・リグニン
・キチン
・キトサンなど
・粘着性があり胃や腸の中をゆっくり移動する
・腹持ちが良く、食べ過ぎを防ぐのに役立つ
・糖質の吸収をゆるやかにする
・食後血糖値の急激な上昇を抑える
・胆汁酸やコレステロールを吸着して体外に排泄する
・腸の粘膜を守る
・ビフィズス菌など善玉菌を増やす
・腸内環境を整える
・胃や腸で水分を吸収して膨張する
・腸を刺激して大腸の蠕動運動を活発にする
・便通を促進する

注目される生理機能

■ 食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させる

食べ物から摂取した脂肪は小腸から吸収されて血液中に入り、身体を構成する材料やエネルギーとして利用されますが、消費し切れなかった脂質は中性脂肪として蓄積されます。コレステロールも体内に存在する脂質の一種で、細胞膜や胆汁酸、副腎皮質ホルモンや性ホルモンの原料となるなど、私たちが身体を維持するうえで重要な役割を担っています。しかし中性脂肪もコレステロールも過剰に蓄積されると動脈硬化の原因となり、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞のリスクを高めると言われています。

水溶性食物繊維は、消化管内部の水分に溶けてゲル化し粘着するため、腸管壁からの脂肪の吸収を抑制します。また、脂肪の消化に必要な胆汁酸は、コレステロールを原料に肝臓で作られますが、胆汁酸は十二指腸に分泌され、小腸で再吸収されて肝臓に戻ります。しかし、腸内に食物繊維がたくさんあると、胆汁酸は再吸収が阻害され排泄されてしまいます。不足を補うために肝臓は新たに胆汁酸をつくりますが、その際原料として消費されるため、コレステロール値が下がります。

近年、日本でもコレステロール値が高い人が増えていると言われますが、食生活の変化により食物繊維の摂取量が減ったことも一因だと考えられています。

■ 糖の吸収をおだやかにする

食事から摂取した炭水化物(糖質)は、体内でブドウ糖に分解され、小腸で吸収されます。粘度の高い水溶性食物繊維と一緒に摂取された糖質は、単独で摂取したときよりもゆっくりと胃から腸へと移動し、腸に到達したあとも、やはりゆっくりと消化・吸収されていきます。また消化・吸収に時間がかかるということは、腹持ちが良いことも意味します。実際に摂取した量以上の満腹感が得られるということで、水溶性食物繊維は血糖値の抑制だけでなく、食べ過ぎを防ぐのにも役立ちます。 難消化性デキストリンは水溶性食物繊維の一種ですが、「脂肪の吸収を抑えて排出を増加させる」「糖の吸収をおだやかにする」という働きが、特定保健用食品や機能性表示食品でも利用されています。

水溶性食物繊維

■ 便の量を増やす

食物繊維がお通じを良くすることは、よく知られています。不溶性食物繊維は、腸内で水分を吸収して膨張し、便の量を増やします。この膨らんだ食物繊維が腸壁を刺激して、蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、便が消化管を通過する時間を短縮します。その結果、お通じが良くなるのです。

水溶性食物繊維

■ 腸内環境を改善する
私たちの腸の中にはおよそ600~1,000兆個もの腸内細菌が存在し、腸内細菌はその働きから「善玉菌(有用菌)」、「悪玉菌(有害菌)」、「日和見(ひよりみ)菌」の3つに大きく分けられます。文字通り私たちの健康に良い影響を与えるのが善玉菌、悪い影響を与えるのが悪玉菌です。日和見菌はその機能が良くわかっていない腸内細菌のことです。腸内環境はこれらの腸内細菌のバランスに影響されます。

腸内環境を改善するには、善玉菌を増やし、悪玉菌を増やさないことが重要です。そのためには、プロバイオティクスとプレバイオティクスを同時に摂取するのが効果的です。

プレバイオティクスとは、①消化管上部で分解・吸収されない、②腸内のプロバイオティクスのエサになり、善玉菌を増やす(悪玉菌は増やさない)、③腸内細菌のバランスを改善し維持する、④人の健康の増進・維持に役立つ、という条件を満たす食品成分を指します。

オリゴ糖や水溶性食物繊維は、ビフィズス菌や乳酸菌など善玉菌のエサとなり、善玉菌を増殖させます。またビフィズス菌や乳酸菌は代謝過程で酪酸や乳酸などの短鎖脂肪酸を産生します。これらの酸が腸内を酸性に保ち、善玉菌が棲みやすく悪玉菌が棲みにくい環境となります。

参考図書

  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2015年度版
  • 厚生労働省「国民健康・栄養調査結果の概要」平成27年版
  • 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報
  • 消費者庁「特定保健用食品とは」
  • 日本内分泌学会雑誌、68,623-635(1992)
  • 日本栄養・食糧学会誌、46,131-137(1993)
  • 糖尿病、35,873-880(1992)
  • 栄養学雑誌、53,361-368(1995)
  • 日本食物繊維研究会誌、3,13-19(1999)

食物繊維の健康情報

■ 腸内細菌が食物繊維をエサにしてつくり出す短鎖脂肪酸の働き

ビフィズス菌や乳酸菌などの腸内細菌が水溶性食物繊維を代謝する過程でつくり出す短鎖脂肪酸には、腸内を酸性に保ち善玉菌が棲みやすく悪玉菌が棲みにくい環境にする他にも、様々な有用な機能があると考えられています。

最近の研究から、食物繊維と腸内細菌の関係が、免疫調節にも影響する可能性が示唆されています。免疫不全や食物アレルギーの改善に役立つことが期待されます。

食物繊維イメージ
■ カルシウムの吸収促進効果

糖の吸収をおだやかにし、脂肪の吸収を抑制し排泄を増加させる食物繊維ですが、カルシウムをはじめとする各種ミネラル類を吸着し体外に排出してしまうため、過剰摂取には注意が必要と言われることがあります。

難消化性デキストリンなどの水溶性食物繊維が、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛の吸収を促進することは動物実験で確認されていましたが、最近の研究から、カルシウムを吸着しない性質を持つ水溶性コーンファイバーは、思春期の女性のカルシウムの吸収を増加させ、閉経後の女性の骨カルシウム保持に有効であることが報告されています。

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