注目の健康情報 No.32
食べ物は非自己なのになぜ?

掲載日:2016年09月01日

「食べ物」は「非自己」であり、通常の免疫システムなら攻撃すべき対象になる。それなのに、なぜ食べ物は排除されず、吸収されていくのだろうか?

食べ物など身体にとって必要なものに対しては、過敏な免疫反応がおきない特別ルールが存在する。これを「経口免疫寛容【けいこうめんえきかんよう】」と呼ぶ。

病原体などに対しては排除しようとする免疫反応がおきる一方で、食物に対しては受け入れを認める特殊な仕組みが存在する。

この経口免疫寛容は、異物を特別に認めて免疫反応を抑えることから、自己免疫病やアレルギーなどの治療に向けた研究が進められている。例えば、重度の食物アレルギーを持つ子どもに、医師の監督の下、アレルゲンとなる食物を極少量から連続的に増量しながら食べさせる治療法がある。これは経口免疫寛容の概念をもとに行われている。

一昔前では、アレルギーになる食べ物は二度と食べない、またはなるべく食べない方が食物アレルギーにならないと考えられていたが、最近では、ある程度早い時期に口からいろいろなものを食べた方が、食物アレルギーにならないのではないかという議論が盛んになっている。

1990年代、欧米ではピーナツアレルギー患者の増加・重症化が問題になった。

2008年、実際にピーナツの除去を指導されているイギリスの赤ちゃんと、ピーナツを食べさせているイスラエルの赤ちゃん8,600人による調査が行われた。その結果、除去しているイギリスではイスラエルの10倍ものピーナツアレルギーを持つ赤ちゃんがいることがわかった。8,600人の赤ちゃんの中から994人を追跡調査したところ、離乳食開始の遅れは、5歳児の段階で食物アレルギーやダニアレルギーを持つ子供を増やすこともわかった。

つまり、食物アレルギー、いわゆる免疫の過剰反応が起こるのを気にして、妊娠中や授乳中に卵や乳製品、小麦粉など、アレルゲンとしてよく聞かれるものを母親が食べず、また、離乳食でも子どもに食べさせないでいると、経口免疫寛容が働かないことになる。食べさせてもいないのに、卵や乳製品、小麦などに対するアレルギー反応が出てきてしまう場合もあるのだ。

今後は食物アレルギーを起こしそうだから食べないではなく、アレルギーが出ていないなら、幅広くいろいろなものを食べておく、というのが正しい経口免疫寛容の育て方だろう。

かたよったアレルギー情報に踊らされないこと、そして、あきらかな食物アレルギーがあったとしても、医師のもとで必要最低限の食物除去にとどめることが必要と言える。
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