注目の健康情報 No.31
免疫のカギを握る細菌たち

掲載日:2016年08月01日

白血球が戦士ならパイエル板は罠と武器庫といえるだろう。このような強固な守りで病原菌やウィルスから身体を守っている「腸」だ。

なぜ、6割もの免疫細胞や抗体が腸に集中しているのか?

それは腸が「内にある外界」として、外界とつながっているからにほかならない。ヒトは口から肛門まで、体内の中央に空間があるといえる。それは言ってみれば、ひとつの長い「チューブ」のようなもの。腸管は身体の中に隠れているようにみえて、外界に接しているのだ。

加えて、小腸だけでテニスコート1面分もの広さがあるということは、手や顔など体表にある皮膚より、大きな面で外界に触れていることになる。その大きな面に向かって、ひんぱんに食べ物や飲み物などに混じって病原菌やウイルスが入ってきている。

腸は栄養を吸収するのが仕事だが、病原菌やウイルス側にとっても入り込みやすい“侵入経路”といえるだろう。敵の侵入経路に多くの戦士を配置して防御するのは当然の策。そのため腸管には免疫細胞が集中していると考えられる。

では、腸内の免疫機能を強化し、免疫バランスを整えるにはどうすればいいのか。ストレスのないおだやかな生活や睡眠、バランスのいい食生活など、身体にいいとされることはもちろんだが、実はカギを握るのは「腸内細菌」だ。腸内細菌は免疫界の陰の立役者、免疫細胞や腸管免疫系の次に、身体を守っているのは腸内細菌なのだ。

なぜ腸内細菌が?と思う人も多いだろう。生まれてからずっと細菌に触れないで育てたため、腸内にも細菌が全く棲んでいない「無菌マウス」と普通のマウスを比べた。すると、無菌マウスではパイエル板、腸間膜の動脈の根元にある「腸間膜リンパ節」が非常に小さいなど、普通のマウスと比べて多くの違いがあり、無菌マウスはアレルギーを起こしやすい状態になることがわかった。さらに、無菌マウスの消化管は外的なストレスに対して弱いことや、免疫細胞が少ない、腸炎を起こしやすいなどの結果が出た。これらの違いにより、腸内細菌が免疫細胞の活動やバランスをとるのに必須であることが明らかになった。

また、理化学研究所、東京大学、慶應義塾大学先端生命科学研究所の共同研究グループは、2013年11月に、腸内細菌が作る脂肪酸のひとつ「酪酸【らくさん】」が体内に取り込まれて免疫系に作用し、炎症やアレルギーなどを抑える免疫細胞を増やす働きがあることを明らかにした。腸内細菌が作る酪酸には、炎症性の腸の疾患が発症するのを防ぐ役割があることがわかったのだ。

白血球や腸管免疫系が前線で戦っているとすれば、腸内細菌は後方支援といえるだろう。戦士たちが戦いやすい状態、環境になるかどうかは、腸内細菌の状態が大きく関わる。
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