注目の健康情報 No.15
(15)大腸がん促進に働く2次胆汁酸産生に関与する腸内細菌に迫る。

掲載日:2015年10月30日

国際的にヒトの各臓器のがんによる死亡率は異なり、生活習慣,生活条件および食餌成分の違いによることが知られています。特に結腸がんによる死亡率と脂肪の摂取量は正の相関関係にある点で注目され、近年わが国における結腸がんによる死亡率の増加は顕著です。米国ガン研究財団の調査によれば、食物繊維の摂取量が少なく、運動不足が続くと大腸ガンのリスクが決定的に高いと報告されました。さらに疫学調査によって、動物性脂肪の高摂取が大腸ガンによる死亡数を増加させることも知られているところです。これまで大腸がんの高リスク地域と低リスク地域の人々の大便内細菌を比べてみると、有意な差を認めないとされてきましたが、米国からの研究報告では伝統的な日本食を摂取させると、ある種の腸内細菌が優勢に検出されるとしており、さらに、高脂肪食を常食としている都市部のカナダ人および高脂肪食摂取の日本人の腸内細菌の構成を、伝統的な日本食を常食とする農村部の日本人ならびに都市部の日本人成人にそれと比較すると、高脂肪食摂取により、ビフィドバクテリウムの比率が激減し、逆にバクテロイデスやクロストリジュームなどの比率が増加することが認められています。このように大便内細菌の構成は食餌によって変動することは考えられますが、いまだ一致した結論はえられていません。それは食餌成分の構成、食習慣、年齢、腸内細菌の検索法などの問題があるためと考えられています。
 多くの研究者によって大腸ガンの成因に関与する腸内細菌を検出する試みが1970〜1980年代になされてきました。しかしながら、最終的に関与する特定の菌種・菌株は検出されていません。最近、大腸ガン発症に促進的な働きをしていることが知られている二次胆汁酸を積極的に産生している腸内細菌を系統分類学的に再検討したところ、その活性が高く、しかも分離頻度が高い菌種として、シンデンス菌が注目され、さらに新菌種として、ヒラノーニス菌 やハイレモンアエーエ菌 などの菌種が発見されています。しかしながら、難培養・難分離性の腸内細菌の中にその高い活性を持つ菌株が存在していると推定されるために、T-RFLP法や定量PCR法などによる難培養の腸内細菌を含めた腸内細菌の多様性解析を行うことが必要です。さらに、病態を進行させる上で重要と考えられる菌種・菌株が特定されたなら、その特異的プライマーを作製し、定量PCR法により特定菌種・菌株の生理・生態学的意義の解明が期待されています。
 今後、腸内細菌の多様性解析のみならず、新しい腸内環境コントロールのマーカーである腸内代謝産物の測定や腸内細菌由来の機能遺伝子の活性などもクローズアップされているところです。

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