注目の健康情報 No.13
(13) 肥満と腸内細菌の謎を探る

掲載日:2015年10月5日

腸内細菌の多様性解析の進展は、宿主の有する腸内細菌の役割、特に生体防御機能解明に大きな貢献をしています。腸内細菌がいかに生体防御機能をコントロールしているか、現代的課題である肥満を腸内細菌という視点から捉えてみましょう。
 肥満は脂肪組織における異常、過剰な脂肪の蓄積と定義され、慢性の炎症疾患と考えられ、高血圧、脂質異常症、糖尿病などのリスク因子とされています。体重・体格指数(BMI)によって肥満の分類が行われており、WHOによる国際基準はBMI 25以上で過体重、30以上で肥満とされています
さらに、生体の肥満という変化は腸内細菌の構成に影響を与える一つの生体防御と言えるでしょう。肥満と腸内細菌を関連づけた研究の先駆けとして、無菌マウスと体内微生物を持つ通常マウスに高カロリー食を与えると通常マウスが肥満することが判明し、さらに、腸内細菌の構成変化を門レベルに焦点をあてて、肥満マウスでは腸内のバクテロイデーテス類が減少し、ファーミキューテス類が増加することが実証されたのです。 つまり、「肥満型」と「やせ型」に特徴的な腸内細菌バランスが存在することや遺伝的な肥満マウスの腸内細菌を無菌マウスに摂取させると、そのマウスの総脂肪量が増加することが明らかとなりました。無菌マウスに、肥満型マウスとやせ型マウスの腸内細菌を各々与えたところ、肥満型マウスの腸内細菌を与えると体脂肪が47%増加、やせ型マウスのものを与えると27%増加し、肥満を促進する腸内細菌がいるというのです。本実験では、腸内細菌を大きく2つのグループ(バクテロイデーテス類とファーミキューテス類)に分類し、遺伝的な肥満症マウスにはファーミキューテス類が多く、バクテロイデーテス類が少ないという傾向があり、ヒトでも、肥満型ほどバクテロイデーテス類が少ないことが認められています。このようにヒトの腸内には「やせ型」と「肥満型」それぞれに特徴的な細菌が存在するというのです。
さらに、肥満型マウスには、消化が難しい多糖類まで消化分解する腸内細菌が発見されています。肥満型マウスの腸内容物に残ったカロリーは、やせたマウスのそれと比べて少なく、肥満型マウスはカロリーを多く摂取しているらしいのです。
 近年では、肥満、痩せの双子のヒト腸内容物を無菌マウスに移植することで同じ表現型が誘導されることが明らかにされ、特にバクテロイデス属の数菌種が肥満進行を防ぐのに大きく貢献しているらしいのですが、一方で一致しない報告もあり、今後の検討が待たれている所です。
 以上の成績から、肥満原因は過食と運動不足といわれてきましたが、本来あるべき恒常性が崩れ出す要因が腸内細菌の変動と連結していると、腸内細菌のコントロールで肥満を防止することも可能となってくるのです。

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